禁句を使っているかも?
営業マンが言いがちなNGフレーズ

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禁句を使っているかも?営業マンが言いがちなNGフレーズ

営業をしていると、確度が高かったはずなのに、アポが取れなかった。もしくは、売れると思ったのに、意外と断られてしまったといった経験はないでしょうか。もしかすると、自分では気づいていないNGワードを発言してしまったかもしれません。

書店に並ぶ営業向けの書籍では「このように言えば売れる」というトークスキルについて書かれたものが多いですが、「このように言ったら売れない」といったNGワードを避けることも重要ではないでしょうか。

2017年6月に出版された書籍『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』では、営業職がつい言いがちなNGワードとともに、どのように言い換えればよいのかOKワードも合わせて紹介しています。

トップセールスが言わないNGワードとはどんなもので、どう言い換えればよいのでしょうか。著者の渡瀬謙さんに、解説してもらいました。

最初のあいさつが肝心! 電話のアポで「お世話になります」はNG

まず紹介してもらったのは、電話でアポ取りするときのNGワード。電話での営業トークでは、冷たくあしらわれて、すぐに切られてしまうことも多いのではないでしょうか。あまりに断られる確率が高くて、トラウマになっている人も多いかもしれません。

「断られる原因は、第一声にあります。『お世話になります』『お忙しいところ、すみません』などの営業マンっぽいセリフ。これらは、『私は営業マンです』と名乗っているのと同じこと。電話に出た相手は、売り込みの話など聞きたくありません。営業の電話だと気づいたら、一刻も早く切りたがるでしょう。営業として当たり前のように使う言葉が、タイミングによっては、警戒心をあおる言葉になるのです」(渡瀬さん 以下同)

こうした決まり文句を使ってしまいがちなのは、なぜなのでしょうか。

「世間では、『営業は、このように話すべき』というイメージができあがっています。例えば、『そこのところを何とかお願いします』『何かありましたらご連絡ください』などのフレーズは、営業職がつい使ってしまいがち。当たり前のように使っている言葉に疑問を持つことが必要なのです」

それでは、NGワードをどのように言い換えればよいのでしょうか。

「電話口では、先に挙げたあいさつをやめて、『ちょっとお伺いしますが』から始めてみましょう。アポ取りというのは、商品やサービスに興味を示して、話を聞いてくれる相手を探す作業です。お願いしたり売り込んだりするのではなく、フラットに問い合わせをする。リサーチャーになりきって、電話することがポイントです」

最初に営業と思わせないとしても、いつかは営業の話をしなければなりません。その後は、どのような姿勢でのぞめばよいのでしょうか。

「アポ取りの電話は営業ではないですし、ましてや営業してはいけません。電話ではアポイントを取ることだけに専念すること。営業するのは実際に会ってからです。電話アポは、あくまでも自分の商品を買ってくれる可能性がある人を探すのが目的ですから」

ヒアリングで「購入予定はありますか?」といきなり聞くのはNG!

相手が自社商品に興味を持っているのか? 営業職なら必ず知りたいことでしょう。ただし、ヒアリングは、売り込みをする場面ではないと、渡瀬さんは指摘します。

「『購入予定はありますか?』と、いきなり未来の質問をすれば、お客さんから警戒され、本音を話してくれなくなるでしょう。その理由は売り込みのニオイがするからです。ヒアリングをしながら売り込みもしようとすると、誘導尋問のような質問をしがち。そうなると、相手からの信頼はなくなります」

ヒアリングでは未来の質問はNGとのこと。それでは、どんなことを聞くのがよいのでしょうか。

「コツは、『過去』を聞くこと。たとえば、「この商品、今まで使ったことはありますか」から切り出します。すると、売り込まれる感じがなく、事実を思い出すだけでよいので、お客さんは警戒心を持たず素直に答えやすくなります。そして、過去→現在→未来と徐々に展開すれば、事実ベースでヒアリングのポイントが見え、営業が知りたかった『未来』のこと、本当に聞きたかったお客さんのニーズをスムーズに確認できます。こういったヒアリングをすると、信頼を築くことができ、たとえその場で売れなかった場合でも、後の紹介につながることがよくありました」

商品の特長すべてを伝えるのはNG 相手のニーズに合わせた説明を

お客さんへの商品説明では、特長をすべて伝えれば、きっと買ってくれるはず。そうした意識こそ営業職の陥りやすい勘違いだと、渡瀬さんは語ります。

「厳密にはNGワードではありませんが、商品の特長はいくら説明しようが、相手が聞く耳を持ってくれないと意味がありません。だから、トップセールスは、長々とした商品説明を絶対にしないのです」

では、商品が売れる説明とは、どのようにすればよいのでしょうか?

「お客さんが本当に重視するポイントを探り出し、そこにフォーカスした説明をします。たとえば、同じ洗剤を説明するにしても、『どんな汚れでも落とせるのが特長です』と『先ほどあなたが悩んでいるとおっしゃっていた、シンク汚れにピッタリの洗剤です』では、後者のほうが相手に響くでしょう」

どうしたら、お客さんが重視するポイントを探り出すことができますか?

「すぐに説明を始めないことです。お客さんが『洗剤が欲しい』と言ったとしても、すぐに飛びつかずにこのように聞きます。『洗剤ですか? ちなみに何をきれいにしたいですか?』 相手がどうして洗剤を欲しがっているのかを具体的に掘り下げる質問をすれば、説明すべきポイントが絞られてくるでしょう」

営業職のNGワードまとめと実践方法

場面 NG OK
電話のアポイント お世話になります ちょっとお伺いしますが
ヒアリング 購入予定はありますか?(未来) 今まで使ったことはありますか?(過去)
商品説明 特長をすべて説明しようとする お客さんのニーズに合わせた説明をする

今回さまざまな場面のNGワードを紹介していただきましたが、大切なのは、相手の視点で考えること。営業先に行く前に「相手のために、自分が何をできるか」を考えて臨めば、NGワードを言うことはなくなるはずです。

ただし場合によっては、NGワードを理解しているにも関わらず、上司に指示されるまま、いつもの決まり文句を使わざるを得ないこともあります。そのようなときにどうすべきかを、渡瀬さんに聞きました。

「たとえば、1日10件のアポイントがあるのだとしたら、8件は上司に指示された通りに行います。そして残りの2件だけ、実験的に自分なりの方法としてNGワードを使わずにやってみるのです。すると、どちらの営業スタイルが、お客さんに受け入れてもらえるかが実感できます。あとは自分がやりやすい方法に変えていくだけでいいのです。お客さんとの信頼関係ができれば、自然に売上も伸びてきます。そうなれば上司は文句を言いません」

営業で大切なのは、相手のことを考えることだと渡瀬さんは言います。

「大切なのは、営業側である自分がどう言うかではなく、お客さん側がどう思うかに意識をフォーカスすること。相手のための言動になっているかどうかが、売れる人と売れない人の違いです」

(取材・文:ふじもとめぐみ/編集:ノオト)

取材協力

渡瀬謙さん
サイレントセールストレーナー/ピクトワークス代表取締役。明治大学卒業後、一部上場の精密機器メーカーに営業職として入社。その後、リクルートに転職。社内でも異色な無口な営業スタイルを確立し、入社10カ月目で営業達成率全国トップになる。その後、ピクトワークスを設立し、内向型で売れずに悩む営業マンの育成を専門に、全国でセミナーや講演などを行う。主な著書に『内向型営業マンの売り方にはコツがある』(大和出版)など多数。